前回は、銘柄ごとの業績の確認や、今後の配当金予想の確認方法などについてお伝えしました。
いろんな銘柄の配当金予想を決算資料で見ていくと、「DOE〇%以上を目安とします」などと書かれた場合があるかと思います。
DOEとは何者なのでしょうか。今回はこれについて解説したいと思います。
DOEとは、「dividend on equity ratio」の略で、株主資本配当率とも呼ばれます。
計算式は、DOE(%)= 配当総額 ÷ 純資産 × 100 で求められます。
ちなみに純資産とは、資産から負債を除いたもので、返済する必要のない企業の資産になります。
つまりDOEを基準にするということは、「配当金を純資産の〇%出します!」ということになりますね。
配当性向を覚えているでしょうか。配当性向(%)は、配当金 ÷ 当期純利益 × 100 であらわされる指標でしたね。DOEとの違いは、配当性向は当期純利益を基準としていること。つまり、当期純利益が高ければ配当金も高くなり、当期純利益が低ければ配当金は低くなります。赤字だと0円になってしまいますね。
これに対しDOEは、純資産を基準としています。純資産は当期純利益と比べると安定しており、利益が一時的に悪化しても配当金は安定して出してもらえることになります。
以前紹介した投資家ヘムさんも、「増配株投資」の本の中で、DOE採用銘柄は「増配継続確率がぐっと高まる」と言っています。そして、DOE採用銘柄のみでポートフォリオを組まれており、そのポートフォリオはTOPIXを大きく上回る成績を残しています。
DOE〇%を目安とします、とDOEを採用している銘柄は、高配当株投資家にとってとても魅力的な銘柄になるわけですね。
それではDOEを採用している銘柄について3社ご紹介したいと思います。
- 共同印刷(DOE 3.5%)
- 小松ウオール(DOE 6.0%)
- 第一三共(DOE 8.5%)
①共同印刷・・・DOE 3.5%
共同印刷は大手の印刷会社で、凸版印刷などに次ぐ規模の会社ですが、近年はICカード事業や日用品類のパッケージなどに強みを持っているそうです。
こちらの資料に以下の記載がありました。(出典:2025年3月期 決算説明資料)

上記の通り、DOE 3.5%を目安として配当金を出してもらえます。
ヤフーファイナンスによるとPERは11.25倍、PBRは0.68倍なので、MIX係数=7.65となり、なかなかの割安株ですね。
IR BANKで過去の業績を見てみましょう。(出典:IR BANK)

売上はヨコヨコ、経常利益、当期純利益はV字回復してますね、堅調な印象です。

財務状況で見てもらいたいのが、自己資本比率と有利子負債比率です。自己資本比率は高いほど倒産しにくい、でしたね。有利子負債比率はいわばどのくらい借金しているかです。低い方が安全性が高く、高いとリスクがありますが、借金をして積極的に投資をしているとも言えます。
共同印刷は上記の通り、自己資本比率は50%前後で、比較的、財務健全ですね。有利子負債比率もそこまで高くなく、2022年から減らしています。

さて重要な1株配当ですが、とても安定していたところから、2025年度に急に倍以上になりましたね。どうやらDOE3.5%を目安にしたのは2025年度かららしいです!これまで減配もありませんね。
以上、共同印刷でした。業績も安定しており、減配もなし。これは結構有望な候補ではないでしょうか。今すぐ買わなくとも、監視しておいてもいいかもしれませんね。
②小松ウオール・・・DOE 6.0%
小松ウオールは間仕切りやドアの会社です。移動間仕切りでは国内トップシェアらしいですよ。
こちらの資料に以下の記載があります。(出典:2025年3月期 決算概要説明)

今期からDOE目安は6.0%となり、これまでのDOE目安3.0%から大きく増配となりました。やはり安定して配当金を出すことをアピールしていますね。
ヤフーファイナンスによると、PERは16.10倍、PBRは1.26倍ということで、MIX係数=20.29となり、やや割高感が否めませんね。
IR BANKで業績を見てみましょう。(出典:IR BANK)

売上、経常利益、純利益とも、右肩上がりでいいですね!営業利益率もそこそこ安定しています。

自己資本比率が80%超とかなり高いですね。不正でも起こさない限り、会社が倒産することはなかなかないでしょう。

赤字だった2010~2011年以降、減配はなく安定して維持・増配をしています。そして2025年度にDOE6.0%目安となり、ぐんと配当金が増えました。増えすぎて、配当性向的には大丈夫なのかなと思ってしまいますね。
以上、小松ウオールでした。割高感こそあるものの、財務健全だし、減配の可能性もかなり低そうなので、こちらも監視銘柄に組み込んでもいいかもしれません。
③第一三共・・・DOE 8.5%
第一三共はご存じの通り製薬会社です。CMでもおなじみですね。
こちらに中期経営計画の資料があり、配当金に関する記載がありました。(出典:第5期中期経営計画
(2021年度-2025年度))

しかし、最新の決算資料を見てみると、2025年度はDOEが8.0%から8.5%に増配されるようです。(出典:2024年度決算説明会)

DOEを採用している会社の目安は2.5~3.5%が多いようですが、DOE8.5%は破壊力がありますね!
ヤフーファイナンスで調べると、PERは21.89倍、PBRは4.14倍、MIX係数は90.62でした。さすが大手の製薬メーカーだけあって、割高ですね(汗)。
IR BANK行ってみましょう。(出典:IR BANK)

売上ですが、ヨコヨコの状態からここ4年は右肩上がりになってますね。営業利益、当期純利益も同様にここ数年右肩上がりとどんどん成長してます。

自己資本比率(上表では株主資本比率)は最近は少しずつ下がってきているものの、最新47%と悪くない数値です。有利子負債比率も大きくはなく、財務健全ですね。

2024年から一株配当の伸びがすごい!配当性向も前回35.5%と高すぎないのもいいポイントですね。
以上、第一三共のデータでした。業績は安定しており、配当金もどんどん増配してくれる優良企業ですが、意外にも現在の配当利回りは2.20%程度なんですね。MIX係数を見てもとても割高ですので、株価が下がって配当利回りが高くなったときに、購入を検討する、的なポジションで僕はいたいと思います。
以上、今回はDOEについて解説しました。
DOEは一時的に赤字になっても配当金は維持されやすく、DOE採用銘柄からは株主にしっかり還元する姿勢を感じられますね。
DOEは「DOE一覧」などで検索すると、一覧表が載ってるサイトが見れますので、こちらから銘柄調査してみてください。
※投資は自己責任でお願いします。